恋々綴り。【短編集】
おまけ

#26



「別れて」


 目の前にいた元彼氏。細長い目が裂けるように大きく開いた。店内はざわざわとしていて、まるでこちらの様子など気にしていない。


 呆然、とする貴方。
 別れなきゃダメなのよ。じゃなければ、きっと、お互いが苦しくなるから。そう言っても前は伝わらなかった。だから、小さな嘘を積み上げる。


「もう、いらない」


 胸が痛い。痛い。痛い。 彼は苦笑いで「そーいうこと」と財布の中から野口を取り出して机においた。

「わかった、バイバイ」


 物分かりがいい。
 いつも余裕綽々で。
 でも、それで隠せない傷ついた表情で席を立ち、店から出ていく。


 ぽっかり何かが開くように、涙はずっと零れ落ちていた。



Fin
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