恋々綴り。【短編集】

#4

「好きだよ」


 彼は簡単にそう言う。
 抱き締められたとき、本当にそうなのかなと不安も感じ。


 同じように抱きつき、ピアスのたくさん付いた耳をただぼんやりと眺め、その時に見つけた一つの文字。


 輪になっている太めのピアスに“ARUNA”と掘られている文字。



 大好きだった胸板を押し返し、
 大好きだった彼に今までありがとうと笑って、
 

 家を出た。


 合鍵を、捨てに。


Fin
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