恋々綴り。【短編集】

#5



 午前十時、噴水の前で彼と十一時に待ち合わせ。

 めかし込んで、新作のキャラメル色のコートを着た。いつもより化粧を丁寧に施した。髪の毛は美容院でやってもらった。腕時計は彼からもらった華奢なデザインのブランドものだ。


 午前十一時。もう彼は来るだろうか。会ったらなんて言おう。おはよう、かな。無難に。可愛いっていってもらいたいな。


 十二時。どうしたんだろう。連絡もない。掛けようか。いや、でもあとちょっと待ってみよう。


 午後三時。遅いっていうレベルじゃない。どうしたんだろう、事故?いや、そんなこと考えちゃダメ。じゃあ、なんて?他の女の子といるとかは絶対無い。もう電話してもいいよね。


 午後六時。連絡無い。寒い。ご飯も食べてないし、お茶も無くなった。あんなに明るかった空がもう、真っ暗。ねぇ、一言だけでも連絡ちょうだい?


 刺すような冷たさに、涙がポロポロ落ちた。

 全部台無し。



 貴方は今、どこにいるんですか?



Fin
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