恋々綴り。【短編集】
#8
雨の日になるって知っていたら。
昇降口からぼんやり空を見上げていた。
灰色、雨がかなりたくさん降っている。
残念なことに、傘忘れた。
「あれ、崎山どうした?」
野球部がたくさん校舎内に入っていってる。話し掛けてくれたのも野球部。同じクラスの阿賀君。
「可哀相なことに傘忘れちゃったの」
そう言えば、フハ、と彼は笑う。
「なにそれ、自分で可哀相とか言うの?」
「実際可哀相でしょ?」
自信満々に言えば、余計に阿賀君に笑われた。なんか、うん、嫌味にならない爽やかな笑い方。
阿賀君はロッカーから何か取り出していた。体育館シューズと………レインコート。
それを「キャッチしろよ」と投げられてそれで私の体全部隠れた。
サイズ大きすぎる。
「傘じゃないの?」
「文句かよ、完全防具だぞそれ」
向こうにいた部員に「阿賀ー」と叫ばれ彼は走って行ってしまった。
良かった。顔が隠れてて。
今、絶対顔赤い。
Fin