甘い匂いに誘われて…
オフィスの片隅に追いやられる様な形の会議室。




「失礼致します。」





しかし、会議室とは名ばかりで今は部長しか入らず、部長室とまで呼ばれている。



案の定、部屋の中には部長が一人資料に目を通していた。
その上私には気づいていない様子。






…仕方が無い。


「部長。コーヒーお持ちしました。」


わざと甘い声を出し、耳元で囁く。





ビクッ





一度大きく体を揺らし、今度こそ気づいた部長は、




「俺、前に言ったよね。
耳元でしゃべるなって。こしょばいから。」




と、頬杖をついた手の中で頬を膨らませている。

27にもなる大の大人が。





「部長は普通に呼んでも気づかないですよ。
それに、私も言いましたよね。何で課長の私に、毎日コーヒーを淹れさせるんですか。」




と、部長の後ろで負けじと頬を膨らませた。

26にもなる大の大人が。
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