甘い匂いに誘われて…
「……。」
悔しい。
そして、何だか無性に寂しい。
あんな事されたら、誰だって勘違いしたくなる。
私の事、好きなのかなって。
でもそんな淡い期待を抱いたところで、彼は所詮私の大事な上司に過ぎない。
そんな事百も承知だったはずなのに、有り得ない事を期待した自分が恥ずかしくなる。
「なぁ。」
私を見ずに彼が言う。
「俺と結婚してみない?」
軽い言葉とは裏腹に、どこか切羽詰まったような彼の声が部屋中に響いた。