『A』
 
依頼に来たのは一組の男女、男性の方は、やや冴えない感じの、おっとりした普通の人、髪はボサボサで、服装もTシャツにジーンズと超普通。

女性の方も、これまたおっとりした感じの女性、際だって美人というわけではないが、穏やかな微笑が魅力的な女性。

言ってしまえば、二人共どこにでもいそうな普通の男女、普通のカップルだ。

「…では、もう一度確認するが、依頼内容はお二方の護衛…でいいのかな?」

話を聞いていなかった美柑の為にか、響子が依頼人に、依頼内容を再度確認する。

「はい、そうです」

「………しかし、護衛と言ってもな…
失礼だが、お二人共極めて普通の一般人のようだ…
わざわざ護衛を雇ってまで、一体、何から身を守りたいというんだね?」

言い終わるとすぐに、響子はスパーーー、と煙草を蒸す。

「…そう…ですね
…やっぱり、お話すべきですよね…」

二人で見合って、うん、と頷き合う男女。

「…僕の名前は吉村健二郎(よしむら けんじろう)…
実は…吉村カンパニーの次期社長なんです」
< 105 / 401 >

この作品をシェア

pagetop