『A』
「どうぞ…お口に合うかわかりませんが…」
箱の中から奈津子が取り出したケーキは、普通の苺のショートケーキ。
それを、キッチンに運び、8等分に切って持って来る石姫。
各々の前に、小皿に乗せ置く。
ちなみに、響子と美柑の皿には、二つずつ乗っている。
「このケーキ、奈っちゃんが作ったんですよ」
「えっ?!嘘?!
凄いっ!!」
目をキラキラさせて奈津子を見る美柑。
「私…パティシエール――ケーキ職人――になりたくて、今修行中なんです」
「へぇ〜〜〜
絶対なれるよ!
だってこんなに美味しいんだもん!
…あ、いただきました」
「速っ!?」
「ミカンは食べるの速過ぎるです」
「そうだぞ…
甘い物を食べる時はだな
こう、スイーツの神様に感謝しつつ…」
「あ、所長の苺頂き♪」
ヒョイッ………パク
「な゛っ!?
………
みかん………貴様はやってはいけないことをしてしまった………」
ゴゴゴゴゴ…と、効果音が聞こえてきそうな位に、静かに怒りをあらわにする響子。
「万死に値する!
死ねぇっ!!」
「所長!私の苺を差し上げますから!」
「そうか?悪いな鷹橋」
苺を食べるや否や、コロッと大人しくなる響子。
美那海響子…元々危険な人物だが、甘い物が絡むと、彼女はその危険度が更に増すのだ。