『A』

甘い生活

 
       ◇

「どうなってるのかしら?森本?」

香が焚かれた、やや神秘的な印象のある広い部屋に、甲高い女性の声が響き渡る。

「へい、どう…とは?」

「私は、あの坊やを消せと言った筈よ
なのに、ど〜〜してまだピンピンしてるのかしら?」

キツめの香水の香りを身につけた、黒髪ロングストレートのこの女性。

身長はかなり高めで、スタイルもモデル並、そしてなによりも…美人だ。

吉村淳美、かの大会社、吉村カンパニーの次期社長であった吉村秀一の妻…だった女性だ。

「それが…二日程前からあの坊主、ボディガードを雇いやして…」

「ボディガード?」

「へい、それがなんとも隙のない野郎で…
片時も離れやしませんでね
んで調べてみたところ、あの有名な『A』のスイーパーの一人らしいんでさぁ」

「えー…す?
なぁに、ソレ?」

「日本で最高と目されてるスイーパー集団ですよ
奴らにこなせない依頼はないってんで…
アレクサンダー大王が裸足で逃げ出すってもんらしいですぜ」

「そう…まぁ、普通はそこは閻魔大王よね」
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