『A』
◇
「…そうそう、うん、ヒメちゃんやっぱり筋が良いよ」
「そうですか?
…照れるです」
「ね〜ケーキまだ〜?」
「美柑…そう言うなら手伝ってよ〜」
「え〜〜〜…パス」
「仕方ないです
ミカンは食べる専門ですから」
「そそ、ヒメわかってるぅ」
「もう…」
キッチンでケーキを作っているのは、石姫と奈津子の二人。
奈津子が『A』の事務所で寝泊まりするようになってから、奈津子のケーキレッスンを受けるのが、石姫の日課になっていた。
最初は遠慮がちな奈津子であったが、人見知りしない美柑の性格と、この、石姫へのケーキレッスンのおかげで、今ではすっかり『A』のメンバーに馴染んでいた。
その、気を許した者にだけ見せる屈託のない笑顔は、彼女を、より美しく魅力的に見せる。