『A』
 
「今日はいい天気ですね」

「あなたのオススメはどれですか?」

「昨日食べたやつ、美味しかったです」

「休みの日はいつですか?」

ってね、買う時にね、必ず何か一言付け足していくの。

一日一言、他愛もない内容、私は、それに相槌を打つだけだった。

そんな日々がいくらか続いて…ある日、彼が髪を綺麗に整えて、服装も今風の若者って感じで来たの。

そして唐突に…

「僕とデートに行きましょう!!」

えっ?!何言ってんの…って驚いたけど…

「は…はい」

って、それ以上に、自分が気付いたらOK出してたことの方が驚いたな…。

初めてのデートは最悪だった…

植物園に行って、綺麗なお花達を見て…その時、二人で選んだハーブを買って…。

私が作ってきたサンドイッチを「美味い美味い」って夢中で食べてくれて…楽しかったなぁ。

え?どこが最悪か、って?

その後よ!

彼がね、自分の描いた絵をプレゼントしてくれたの。

それは、私の顔だったんだけど…。

もう…それはトラウマになりそうな位に酷いもので…。

私は絵を彼に叩き付けて…

「からかってたんですね!」

って、つい怒鳴っちゃって、一人で帰ろうとしたの。

そしたら…

「待って!待って下さい!
僕は…僕は本当にあなたのことが大好きなんです!」

って、なんとも捻りのないストレートな…でも、彼らしい告白をされたの。

………………

………
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