『A』
 
………

「たっだいま〜」

「ただいま」

「おかえりです…
………ミカン、何ですか?
ソレ」

美柑は、大量に買って来た品物を手に、肩にオッサンを担いで帰って来た。

「ん〜途中でちょっと、ね
ンフフ、可哀相だけど…所長の拷問部屋行きだね…
アタシのことバケモノ呼ばわりなんてするから…」

「…そうですか
まぁそんなことより、面白いことがわかりましたよ」

「ヒメちゃんリアクションドライだなぁ…」

「…面白いこと?」

「例の、吉村淳美のことです…」

「っ!」

「吉村淳美…旧姓・花山淳美(はなやま あつみ)
ここら辺一帯を仕切っている八九三…花山組二代目組長・花山顔流(はなやま かおる)の娘ですね」

「ヤクザ屋さんの娘!?
ほぇ〜」

「ほぅ…なるほど、面白くなってきたな」

「キョーコ、おかえりです」

いつの間にやら、事務所に帰って来ていた響子。

「ただいま
しかし…、これでその女が完璧に黒だと決まったな」

「なんで?
ヤクザ=悪者…ってのは、ちょっと短絡過ぎない?」

「バカタレ…
みかん、そいつの胸元を見てみろ
ご丁寧に金バッジ付きだ」

「え?あ…ホントだ」

肩に担いでいる男の胸元を見る美柑。

「フフン、ご苦労ヒメ
ここまで分かれば…後は私に任せておけ」

シュボッ!と、煙草に火を付ける響子。

「ああ、それと…
私の分のモンブランはあるんだろうな?」

「ど、どうして…?」

「匂いで分かるさ…
上手そうな栗の香りだ」
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