『A』
 
       ◇

「ね、そろそろじゃない?
次期社長がいらっしゃるの」

「そうね…く〜早く来ないかなぁ…」

ひそひそと、仕事中に内緒話をしているのは、吉村カンパニー本社の受付嬢の二人。

「………あ!来た!」

キィッ!とブレーキ音を立てながら、本社の前に停まったのは、黒塗りのベ〇ツのリムジン。

そこから出て来たのは、普段のボサボサ頭ではない、キチンとした身なりの健二郎と、タキシード姿でビシッ!と決めた、長身痩躯の美男、鷹橋匠だ。

「「おはようございます!」」

「おはよ〜」

「おはようございます」

元気よく挨拶をする受付嬢に返事を返す、次期社長とそのボディガード。

「はぁ〜〜〜」

「やっぱりいつ見ても…」

「「かぁっこいいよね!」」

ハモる二人。

「何者なんだろうね…
あの人…」

「ハァ…素敵…私の王子様…」

「ちょっと!アンタのじゃないでしょ!」

いなかった筈の次男のまさかの登場で、話題の中心だった健二郎だが、更に、三日前から現れた、謎の美形ボディガード。

完璧に、社内の話題を独占している二人であった…。
< 125 / 401 >

この作品をシェア

pagetop