『A』
………
「ハーッ、疲れたぁ〜
今日の仕事おしまいっ!」
「お疲れ様です」
次期社長としての仕事を終えた健二郎、匠はボディガードとして健二郎に付き始めてから、片時も離れることはなかった。
会社への送り迎えも匠の仕事だ。
社長室からリムジンへと行き、リムジンに乗り込む二人。
「ふぅ〜っ、疲れた〜
高橋さん、いつもすいませんね」
「いえいえ、お気になさらず…
ちなみに、高橋ではなく鷹橋です」
「あ、す、すいません」
「………」
「………」
奈津子達と違い、こちらは、そう、心許せる間柄…とはいっていないようだ。
まぁ、元々二人共、余り話す方ではない。
会話が弾まないのも自然なことか…。
「鷹橋さん…奈津子…元気でやってるかとか、聞いてます?」
「すみません、護衛を始めてから、事務所とは連絡を取ってませんね」
「そうですか………」
「………ふふ」
「?…鷹橋さん?」
「吉村君は、本当に山田君が好きなんですね」
「い゛いっ?!
ちょ!
何言ってんですか?!
いきなり!」
「照れることないじゃないですか…
良いことですよ、人が人を好きになるのは自然なことです」
「………」
「山田君とは、交際を始めてどれくらいになるんですか?」
「そうですね…どれくらいになるかな…」
「よかったら、山田君とのお話、聞かせて頂けませんか?
家まで、まだ大分距離もありますし…」
「………」
健二郎は、奈津子と会った時のことを思い出していた…。
………………
………