『A』
 
どこに行こう…色々悩んだ末、よく行くスケッチ場所の、植物園を選びました。

若者のデートにしては渋過ぎるかな?と思いましたが…。

彼女は殊の外乗り気で…

「サンドイッチを作って来るので、一緒に食べましょう」

と、言ってくれました。

彼女のマイブームが、美味しいハーブティーを作ることで…、ハーブの種を、二人であーだこーだ言いながら選びました。

なかなか良い雰囲気だと思ったので、以前から描いていた彼女の絵を、プレゼントすることにしました…。

僕の絵を見た彼女は、泣きながら怒って、走り去ってしまいました。

自信作だったんですけどね…なんででしょう、未だにわかりません。

どうしていいかわからなくなった僕は、つい咄嗟に…

「待って!待って下さい!
僕は…僕は本当にあなたのことが大好きなんです!」

って………。

本当は、ああ言おう、こう言おう、って色んな口説き文句を考えてたんですけどね、なんとも直球な告白をしてしまいました…。

その日、彼女はそれ以降、一言も話してくれませんでした。

ただ…帰り道、勇気を出して、ソッと差し出した僕の左手を、黙って握り返してくれて…。

二人で、手を繋いで帰りました。

………………

………
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