『Ａ』

　
｢目が醒めたか…って？｣

｢………まだ寝ぼけてるみたいだな…
じゃあもう一本…｣

｢いやいや！いいです！
つうか、いきなりなんてことするんですか！！｣

｢…フン、勘違いしてるお坊ちゃんにお灸をすえてやったんだ
感謝されこそすれ、怒鳴られるいわれはないね｣

｢………勘違い？｣

｢あぁ…全く！
これだから金持ちのボンボンは…｣

｢何を…勘違いしてるっていうんですか？｣

｢………なぁ、お坊ちゃん
おまえは、なんで勘当された家に帰って来た？｣

｢親父も兄も死んで…僕以外に、誰も後継ぎがいなくなったからですよ
話したでしょう？｣

｢………おまえ、それ本気で言ってんのか？｣

｢………何を……？｣

｢…やれやれ、本気で気付いてないみたいだから教えてやろう
…おまえはな、ただ、自分の罪悪感を紛らわす為に、全く興味もない、次期社長なんて座に着いてんだよ…｣

｢罪悪…感？｣

｢そうさ、自分がやらなきゃ、なんて義務感じゃない
好き勝手生きて、親に迷惑かけまくって…その上、恩を返すこともなく死んでしまった親に対して、申し訳ないから、帰ってきたのさ
罪悪感から、自分が楽になる為の、罪ほろぼしとしてな｣