『A』
 
       ◇

[綾瀬君、サポートお願いします]

車の運転席にある無線を使って、匠から連絡が来る。

石姫がいるのは、『A』事務所の4階の自室。

そこにあるスーパーコンピューター『ケット・シー』の前に座っていた。

キャンディの包装紙をクルリと外し、口に放り込み、コロコロと口内で転がし出す。

「…サポート、準備オッケーです」

ケット・シーを介して、監視衛星“チェシャ”へとリンクする。

「事務所から空港までの最適ルート…
検索開始です
ルート毎の実質走行距離計算…
ルート毎の現在の走行車輌数計算…
ルート毎の現在の歩行者数計算…
………
………
………
全ての要素を加味した結果算出、空港までの最適ルート出ましたです
車のカーナビに転送するです、グッドラック」

       ◇

匠の駆る、響子が改造したスーパーリムジン、そのカーナビに映る無数の道の一つが、赤く染まる。

事務所から空港までの、今現在の最適ルートを、石姫がカーナビに送ってくれたのだ。

目的地までの走行に無駄がなく、かつ、道が混んでいない道。

「よし、行きますよ!」

その道を、排気ガスを大量に撒き散らしながら、黒き鷹が走り出した…。
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