『A』
「計器類、チェックOK…
燃料は…まぁ保つでしょう
進行方向は…フランス・パリ
………
V1…
VR…
V2…
………テイク・オフ!」
ゴォオォォォォォ…………
滑走路を駆け抜け、段々と加速していく機体は、遂に大地から足を離す。
鋼鉄の翼を手に入れた黒き鷹が、大空へと舞い上がった…。
………
匠の操縦技術は、確か過ぎる代物だった。
通常の航行速度を遥かに上回った速度で飛行しながら、機内に全く揺れはなく、更に機体への負荷も、極小に抑えていた。
飛んでいた時間は、ほんの僅かな時間に過ぎなかったが、驚く速さで、遂に鷹の眼は獲物を捉えた。
「追い付きましたよ…
後少しで接触します、準備しておいて下さい」
「らじゃー!」
「え…準備って何を?」
「何って…突入する準備に決まってるじゃん」
「とつにゅうって………突入!?
えぇーっ?!
いやいや!
いいですよ!
ここでじゃなくて向こうで会えれば…」
「駄目だよ!
想いはね…早く伝えないと冷めちゃうんだよ
熱い内に伝えなきゃ…
料理と一緒だよ」
「………プ」
「タカさん…何がおかしーの?」
「いえ、別に…」
美柑は至極真面目に言ったのだが、匠は美柑の破滅的料理の腕前を思い出し、ついつい吹き出してしまったのだ。
「そう…ですね!
やっぱり僕は駄目だなぁ…まだまだですね」
「そんなことないよ…
ジローにこんなに想われて…ナッツンは幸せ者だ」
ニッカと満面の笑みを浮かべる美柑、その姿は、下手な男より男前だった。
「そろそろ不時着しますよ
準備早く」
「ふ、不時着?!」
「あちらの機体の上に停めます…
後は美柑について行って下さい
何…我々を信じて下さい
行きます、よー!」
「う、うおわぁぁー!!」