『A』
 
       ◇

「…隣いいかい?」

一人で食事をしていたランニングシャツの少年に、自分の食器を持ったミゲルがそう聞く。

「…好きにしたらいいさ」

「サンキュー」

ドッカと座り込むや否や、好物のポテトを摘むミゲル。

「…なぁボーイ
いい加減、スペックと揉めるのをやめにしないか?」

「………あっちから絡んで来るんだよ
俺からは何もしちゃいねぇさ…」

「なぁ、だったらよ
せめて、何でもいいから銃を持ってくれ
アイツは、ボーイの年齢もだが、ボーイが武器を持っていないのが気に入らないみたいなんだ…」

「…すまないが、断る
俺は、ここに戦争をしに来てるんじゃない…
修行しに来てるんだ
武器なんざ持っちゃ意味ないだろ」

「修行って…ボーイがどれだけ強いのか知らないが、素手で銃を相手にするなんてナンセンスだぜ」

信じられない、といった感じで、肩をすくめ両掌を上に向けるミゲル。

「心配はいらねぇよ
今まで、この拳一つを頼りに生きて来たんだ…」

ギュッと右拳を握り締め、ジッと見つめる少年。

「………そうか
ふぅ、じゃあまだまだスペックとは揉めそうだな
やれやれ、胃に穴が空かないといいんだが…」

わざとおどけた口調で、お腹を押さえる動作をする。

「ハハ…悪いな
………
そういや…アンタに一つ聞きたいことがあるんだが…」
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