『A』
………
「買い出し…ですか?」
「そうだ、俺と…おまえらでな」
やや、敵の攻撃が途切れたある日のこと。
いつものように二人で食事をしていた男と少女に、スペックが話し掛けて来た。
「ミゲルから頼まれてな…弾薬や食糧がちとヤバイ、ってんでな
最寄りの街まで買いに行くことになった」
「私達三人で、ですか?」
「そうだ」
「…私はいいよ」
「いいっつうと…」
「OKだよ」
「…では私も行きましょう
…と、私達がいない間、ここの守りは大丈夫でしょうか?」
「フン、あのガキがいるから平気だろ…
シャクだけどな」
「………」
「んじゃ行くぞ!
ジープ借りたからそれで行く…
アンタが運転してくれよな
黒鉄の鷹…さん」
◇
1時間程車を飛ばし、目的地に辿り着く。
ここは、この国で2番目に大きな街だ。
巨大な建物があるわけではないが、人と物に溢れ、活気がある。
露店や屋台が数多くあり、品物を売り歩く人々…街というよりは巨大な市場といった感じだ。
「凄い…賑やかなトコだね」
「ええ、かなり活気がありますね
それに…戦時中だというのに、皆いきいきとした顔をしている」
「よし、んじゃ、俺は弾とか買いに行っから、ジープ使ってオメェらは食糧を買っといてくれ
ホラ、金」
「了解しました」
「昼飯代位ならそっから出していいらしいぞ
2時間後にここで集合な」
「はい」
「じゃあ」と言いながら片手を上げ、スペックが去る。
「………」
「………」
首から上だけ向き合って、無言で見つめ合う二人。
「時間もありますし…まずは軽く歩いて見て回りましょうか?」
「…うん!」
元気よく駆け出す少女、さっきから妙にそわそわしていたが、どうやら、珍しい商品の数々に、興味津々だったようだ。
「…クス
待って下さい!
…迷子になりますよ!」
恋人同士のデート…というよりは、はしゃぐ娘とその父親といった感じの二人であった。