『A』
◇
「おいおい、なんだよこの基地は…
どっから中に入んだよ?」
制圧軍本部基地の高い塀を見上げ呟くスペック。
「………」
ボゴン!
と、少年がいきなり壁を殴り付ける。
「いっ!た〜〜
やっぱ鋼鉄入りか…
壊すのは骨だぜ、こりゃ」
「ここで暴れて、中から出て来るのを待ちますか?
おそらく、もう我々の存在には気付いているでしょうし…」
「………ううん
ここは私に任せて」
少女が男を片手で制し、ズイと前に出る。
「中から門を開けるから…いつでも突入できるようにしてね」
グイグイと屈伸をし、足をほぐす少女。
「脚力…限界突破!」
そう言った直後、少女は人間には有り得ない高さの大ジャンプをして、塀を跳び越えて行ってしまった。
少女の特殊技能《能力限界突破(オメガ・ビオメハニカ)》は、常人を遥かに上回る身体能力を有するというものである。
ただ、限界を越えた能力は、身体への負担も大きい。
なので少女は…視力のみ、腕力のみ、脚力のみ、嗅覚のみ…といった、“部位のみの強化”をする使い方をしている。
その為、必要な時に必要な部位の能力だけを、最小限の負担で、爆発的に高められるのだ。