『A』
◇
ビー…ビー…ビー…
「ねぇタカさん、さっきからこの音…なんだろう?」
「あまり良いものでは、なさそうですね…
できたら、早く脱出したいのですが…
彼らを置いて行くわけにもいきませんし…」
人っ子一人いなくなった廊下を走り、少年と傭兵を探す二人。
ジープはガソリンが切れた為、乗り捨てていた。
「………っ!
タカさん!」
「…おや…よかった
やっと合流できましたね」
前から走ってくる少年を見て、ホッと息を吐く男。
「のんびりしてる場合じゃねぇぞ!
すぐに脱出しよう!
基地が爆発する!」
開口1番、素早く状況を説明する少年。
「この音はやはりそうでしたか…
…おや?一人足りませんが…」
「っ!
………
スペックは…逝った…」
「「っ!」」
「そう…ですか…」
「………」
男は小さく声を漏らし、少女は静かに涙を垂らした。
「悲しむのは後だ!
爆発の威力はハンパないらしい…
早く、少しでも遠くに逃げないと!
スペックに貰った命…こんなトコでなくすわけにはいかねぇ!」
「!………うん」
「………」
(へぇ……)
少し前の少年とは、明らかに様子が違う。
スペックの死を経て成長を遂げた少年を見て、男は心の中で感心する。
「そういうことでしたら、走って逃げるよりも…」
窓の外を、クイと親指で指差す男。
「アレを拝借しましょう」
その指の指し示す先には、無傷の最新ジェット戦闘機、“トム・キャット”が1台停まっていた。