『A』
 
「全!筋力…限界突破!!」

二人が乗り込んだのを確認して、少女が、全身に秘められた力を解放する。

「んんっ!」

ジェット戦闘機“トム・キャット”の下に潜り込み、そのまま、まるで重量上げのように、戦闘機を持ち上げる。

「おおおっ!?
な、なんだ!?」

機内が斜めになり、亮は驚きの声を上げる。

「タカさん!
エンジン点火!」

「了解…エンジン、点火!」

轟音唸らせ、ジェット戦闘機は、その名の通り、ジェットを噴出する。

ゴオォォォォォ…ッ!!

「く………く」

前に進もうとする機体を、必死に全力で押さえ込む少女。

エンジンが臨界に達するまで、毛頭離すつもりはない。

少女は滑走路の代わりに、機体の加速を手伝っているのだ。

「………エンジン、臨界に達しました!」

コクピットの計器を睨み付けていた男が、少女に向かって叫ぶ。

「…っ行っ…けーーっ!!」

タタッと軽く小走りをして、少女はまるで陸上競技の槍投げのように、戦闘機を大空目掛けてブン投げた!

離陸と同時に最高速で、風を切り飛び上がる戦闘機。

ヒュウゥゥゥーン!

一旦高く舞い上がり、今度は急降下してくる。

「…えいっ!!」

少女は、自分が届く高さに来る頃合いを見計らって…機体に飛び付く。

………が。

「っ!しまっ!…」


一旦機体を掴みはしたが…手が滑り…少女の身体は、宙に浮く…


「………あ…」


それは、絶望的な浮遊感だった。

その時!

ガシャン!

という音を立て、着陸用の車輪が機体から飛び出して来た。

「っ!」

それを、今度こそしっかりとキャッチする少女。

少女が捕まったことを確認した男は、全速力で戦闘機を基地から遠ざけた。

………

彼らの脱出は正に間一髪。

彼らの乗った機体が飛び立ったほんの数秒後…。

幾つもの巨大な稲妻が、同時に大地に落ちたような怒号。

それと共に、かつて制圧軍本部基地だった場所を中心とした周囲半径3が、一瞬にして焼け野原と化した。
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