『A』

桃の花の簪、その桃色の髪に添えて

 
       ◇

こうして、小国の独立を巡る戦いは、終わりを告げることになる。

難攻不落・完全無敵と思われていた本部基地が壊滅したという事実は、大国に大きな衝撃を与えた。

これ以上の戦闘は、徒に損害を増やすだけだと判断した大国の政府は、本部基地壊滅の三日後、小国の独立を認める表明を発表した。

喜びに沸き、泣き喚く小国の人々。

…だが、彼らは知らない。

この独立の、最大の功労者達のことを。

命を掛けて戦った、四人の英雄がいたことを。

       ◇

タキシード姿の男とランニングシャツのマッチョ少年、そして…ピンク色の派手な髪をした巨乳の少女という、へんてこな三人組が公園で食事をしていた。

彼らの傍らにはラジオ、つい今しがた、大国側の小国独立認可表明が発表されたところだ。

「………終わったな」

「ええ…終わりましたね」

「………」

………

会話は途切れ、黙々と食事を続ける三人。

しばしの沈黙…、それぞれが何を想っているのか、それは、本人にしかわからない。
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