『A』
美那海響子のとある一日

午前

 
ドゴォン!

「………ん?」

「キョーコ…おはようです」

「ん?あぁ、おはようヒメ
…っと、なんだコレ?」

「朝一番からジャーマンとは…元気ですね…
芸術品の名に恥じない、美しいブリッジです」

※ジャーマンスープレックスホールド
通称“プロレスの芸術品”。
相手の背後から腰回りに自分の両腕を回して、相手の腹の前で両手をしっかりフック。
そのまま持ち上げ、真後ろに身体を反らせて後頭部からマットに叩き付ける。
そして、ブリッジをきかせてフォールを奪う…という技で、大変危険なのでチビっ子はマネすんな!

「………ん?
コレ…堀田か?」

人間が一人、首から上が床に突き刺さり、ブラブラと揺れている。

「はいです
トールでなければ死んでいるところですよ」

「………うん、心臓は動いてる、大丈夫だ」

貫の胸に耳を当て、生存を確かめる響子。

「腹減ったな…
ヒメ、朝飯頼むわ」

「了解です
先に下りてますから、二度寝しないで下さいね」

「アイアイサー」

部屋から出て行く石姫を見送り、洗面台へと向かう。

バシャバシャ

「ふぅ、さて…今日も頑張んべか」

洗顔を済ませた後、ウーンとノビをして、響子は「よっしゃ」と気合いを入れた。
< 249 / 401 >

この作品をシェア

pagetop