『A』
◇
「ごちそうさま
ヒメ、相変わらず美味かったぞ
特級厨士の資格でも取ったらどうだ?」
「キョーコ…またなんか新しい漫画読んだですね」
「所長、食後にコーヒーはいかがですか?」
「ああ、貰おうかな」
匠が手際よくコーヒーを煎れる、甘党の響子の好みに合わせて、角砂糖3個に蜂蜜を少々混ぜ合わせる。
「〜〜〜♪
いい香りだ…うん、美味い
流石だな鷹橋」
「恐れ入ります…」
ペコリと、軽く会釈をする匠。
「さて…と、依頼の方はどうなっている?」
「全くないです
どこかの誰かさんがハイジャックなんてやらかして以来、依頼件数は0ですね」
「ほう…それはそれは…
迷惑な話だ…なぁ?
みかん、鷹橋」
「そ、そそ…そだね」
汗をかきまくる美柑と…
「ハイジャックだなんて…非常識にも程がありますよ」
他人事の匠は実に対称的だった。
「貴様が言うな!貴様が!
〜〜〜…あれを揉み消すのに、一体いくら使ったと思ってるんだ!?
軽くビル一つは建てられる金額だぞ!?」
「ア、アハハハ…
私、ちょっと散歩に行って来るね〜…」
「あ、コラ!逃げるな、みかん!」
「断る!
脚力…限界突破!
かそくそ〜ち!トゥッ!」
極限まで高めた脚力を使って、驚異の逃げ足を見せる美柑。
「あ………
…ったく!
こんなことで特殊技能を使うな!」