『A』
………
ガックリとうなだれる亮を置いて、店を後にする。
玉と交換した大量のバウムクーヘンを道に置き、携帯に手を伸ばす。
トゥルルルルルルン…
トゥルルルルルルン…
トゥ…ガチャ
[………もしもし、どうしました?キョーコ]
掛けた先はハーモニー(株)本店の電話、出たのは石姫だ。
「ああ、ヒメ、もう店閉めていいぞ」
[もうですか?
まだ開けたばかりですけど…]
「構わん、…そろそろ時間だろう?餌やりの」
[っ!?キョーコ…気付いてたですか?]
珍しく大きな声を上げる石姫、姿は見えないが、かなり驚いていることは語調でわかった。
「当たり前だ、毎日同じ時間に出掛けて、服に動物の毛付けて帰って来りゃ、誰だってわかるだろう?」
[…キョーコ…あの…]
「フン、私の視界にいれさえしなけりゃ構わんさ
好きにしろ」
「っ!キョーコ…」
「以上だ
しっかり店じまいしとけよ」
[………はいです
あの…ありがとうです]
「ああ」と短く返事をして、電話を切る。
ちなみに、流石の響子も石姫が飼っているのが、自分の顔に粗相をしたあの黒猫だということまでは知らない。
その後すぐに、電話帳から新たな番号を検索し、発信ボタンを押した。