『A』
「お〜〜い!
会計を頼みたいんだが!
誰かいないのか〜!?
………
このまま万引きしちまうぞ〜!?」
「ハ〜イハイハイ!
ただ今!」
奥からバタバタと足音を立てながら、金髪で痩せていてまだ若い、パン屋の店長が現れる。
「おっかしいな〜レジはいる筈………ん?」
店長が足元を見ると、左手で、お願い!というジェスチャーと、右手で、シー!というジェスチャーを同時にしながら、体操座りをしている淳美がいた。
「………
………
………
はい、会計ですね」
散々悩んだが、店長は敢えて何も触れないことにした。
「全部で3350円になります」
「高っ!?高くないか!?」
「この“ゴーヤジャム”が、2500円しますから…」
「高いな…う、う〜ん…
いや、コレを食った時の鷹橋のリアクションは捨て難い…よし、買うぞ」
「アァー〜ッハハハハ!
まいどありぃ!」
「ん?………なんか、その笑い声聞いたことあるな…」
「えぇっ!?
………ハッ!」
ここに来てようやく店長は、響子と一度、怪盗として美術館屋上で会っていることに気が付いた。
「…もう一回笑ってみてくれ」
「ア…ア゛ァ゛ー〜ッ゛ババババ!!」
「汚っ!濁音多っ!
う〜ん?やっぱ気のせい…だったか?
…まぁいいや、じゃあな、いただきます」
カランコロン
「ありがとうございましたーっ!!
………フゥ、焦ったね…実際」
「全くですわ………」