『A』
 
「綾瀬さん、どうしたの?
もしかして……って、もしかしなくてもか」

「キョーコが起きないです」

「あ゛〜〜、やっぱりか」

「私では無理でした、トール、よろしくです」

5階まで階段で上り、ガチャリと寝室の扉を開く。

びっくりする位大きくて豪華なベッドで、びっくりする位だらし無い寝相で寝ている女性が一人。

「さぁ」と目と手で促す少女。

「……ハアァ〜」

深く大きなため息を一回ついて、意を決してベッドへと向かう。

……どうか、五体満足でおうちへ帰れますように……。

「…所長!
起きて下さい!
所長!
所長ってば!
しょブヘッ!!」

言いながら肩を掴んで身体を揺さぶる僕の後頭部に、所長の膝が炸裂する。

「……んん?もう朝か?」

生半可なことでは起きない所長だが、何故か、一発僕にお見舞いすると、あっさりと目を覚ます。

それが判明して以来、所長の目覚まし係である綾瀬さんに呼ばれ、毎朝一発いいのを貰っている。
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