『A』
 
その後「着替えるから」とだけ短く言われ、僕だけ部屋から追い出された。

後頭部に、漫画かよ!?って位大きなたんこぶを作って、ソファーでコーヒーを飲んでいると……

「よぉ、諸君、おはよう
皆、元気そうでなによりだ」

なんて、平然とした顔で事務所へ入って来たこの女性は、我らが『A』の所長、美那海響子(みなみ きょうこ)。

ちなみにこの人、一度も出勤時間を守ったことがない……が、誰も文句を言わない、いや、言えないのか。

彼女こそここの法、逆らうだけ無駄なのだ。

このお方典型的な“黙っていたら美人”という人種だろう。

「昨日はお疲れ様
内容の割には稼ぎの大きいボロイ仕事だったな、いや結構結構
更に結構なことに、依頼もまた山積みだ」

「え〜めんどくさ〜い」

「働けることをありがたく思わんか、みかん
働きたくても働けない人も、世の中にはたくさん、いるんだからな……」

「そっかゴメン、アタシが間違ってた……」
「いやいや!
そんな重たくする場面じゃありませんから!」
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