『A』
 
「そうです
一体どのような人物なのか…
性別も年齢も外見も、一切が不明です
今わかっていることは、ただ、この人物が収容されている部屋と
この人物が、彼等にとって何か重要な役割を担っている、ということだけです」

「…彼等ってのは?」

「この国だけではなく、世界中に構成員がいる、かなり大きな組織です…
いつから存在しているのかは不明、組織名もなく、また、その目的も不明ですが…
何がしかよからぬことを企んでいることは間違いありません」

ズ…、またコーヒーを一口。

「かなりの長期に渡り、ある計画を進行させていることだけはわかっていて…
世界中で、その計画を実行する為に、様々な準備をしているようです
そのうちの一つには、兵士量産工場“ファクトリー”の運営等があり…
この研究所で行われている実験も、その一環です」

「なんだか、わからねぇことだらけだな…」

「ええ、ですが…この組織がまともじゃないことだけは、この僕が保証します」

「………なんかあったのか?」

「少し…
まぁ、そんなことはどうでもいいです
一体どんな計画なのかはわかりませんが、それを阻止するのは僕の義務です…
かなりハイレベルなセキュリティシステムがある筈です…
厳しい仕事になりますが…
引き受けて頂けますか?」

「ん〜、なんかあんまり気乗りしねぇな…」

「そう、ですか
やっぱり無理…ですよね
巷で噂の貴方なら、と思ったのですが…」

「おい?
別に無理とか言ってないだろ」

「あ〜あ、残念だなぁ
期待外れですね
いいです、別の人に頼み…」
「やるよ!」

「え?」

ニヤつき聞き返す貫、明らかに確信犯だ。

「引き受けるっつってんだ!」

「そうですか!
いやぁ、ありがとうございます」

実に白々しい演技をする貫。

「………報酬は仕事が終わった後、指定の口座に振り込んどいてくれ」

ブスッとした顔をして、マッチョの男はそう返事をした。
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