『A』

囚われの姫君

 
       ◇

必要最低限の、生活するに足る家具のみがある部屋。

シンプルな作りのその部屋は、24時間監視されており、住人のプライバシー等皆無だ。

最も、ここの唯一の住人である白髪の少女は、物心ついた時からここで暮らしていて、ここ以外の世界を知らない為、そんなことは気にも留めていない。

少女は、ここ綾瀬食品研究所の、唯一の研究成果。

数多くの失敗作、その膨大な犠牲の果て、ようやく生み出された、特殊技能《絶対記録(パーフェクトアルバム)》を持つ者だ。

特殊技能には、生まれ持って保持しているものと、後天的に手に入るものとがあり。

後天的に身につけた場合、遺伝子情報が書き換えられる為、なにがしかのサインが身体に顕れる…。

たいていの場合は、色の変化であることが多い。

少女の場合は、雪のようなどこまでも白い髪と、燃えるような赤い瞳がそのサインだ。
< 289 / 401 >

この作品をシェア

pagetop