『A』
パソコンの電源を入れる少女、駆動音が部屋に響く。
ブォォ〜〜ン
このパソコンは、少女が記録する情報量を増やす為の道具として、部屋に備え付けられているもの。
中には、少女が記録すべき情報が、無尽蔵に詰まっている。
記録した項目にチェックを入れるシステムのカリキュラムで。
一日に記録する量のノルマが決まっていて、ノルマをこなさなければ罰が与えられる。
これは、その目的の為だけのものだ、“本来なら”。
「起動したニャン」
デスクトップ上に映された、可愛いらしいタッチで描かれた猫が、ボイス付きで起動を報せる。
それを見て、その余りの愛らしさに、少女は笑う。
少女の道具としての性能を考えて、余計な感情を抱かないように、少女に与えられるものは、必要最低限なものだけだった。
だが、電族としての英才教育を受け、順調に…否、順調過ぎるペースで能力を伸ばして来た少女は、少女を作り上げた者達の予想を上回る能力を身につけていたのである。
本来、少女の部屋にあるパソコンは、通常ネットに繋がる機能が制限されている品物である。
が、少女のその高過ぎる能力で、その制限は撤去されていた。