『A』
 
パソコンを完璧に使いこなせるようになってからというもの、少女は様々な知識を仕入れていった。

そこで得た知識は、今まで義務として詰めこまされていたものとは違い、ごくごく普通の一般人達の間でやりとりされている、生きた知識だった。

研究員達の目をごまかすのも忘れてはいない。

ネットに繋いだ形跡を消すのは当然で、繋いでいる最中も、そのことを悟らせない。

監視カメラには、当たり障りのない映像を送り込みごまかしている。

ネットで得た活きた知識達、それらは彼女の好奇心を刺激し、胸躍らせた。

その中でも、1番少女の心の琴線に触れたのは…。

とても可愛らしい、数多くの種類の猫達の画像だった。

先程の起動時に現れた猫もネットから落としたもので、少女の猫好きを物語る。

「………ハァ」

今日も今日とて、猫の画像を見る少女。

彼女にとって至福の時である筈の時間だが、少女は何故かため息を漏らす。

「本物…見てみたいなぁ…」

頬杖を突き画面を眺めながら、少女は一人ごちた。

少女自身、それが叶わぬ願いだとはわかってはいた。

わかってはいたのだが、一度足りとも部屋の外へ出たことがないということが、少女の、外の世界を夢見る気持ちに拍車をかける。
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