『A』
 
………

「………ねぇ」

「ん?なんだ」

「なんで私のこと、お姫様とか、ヒメって呼ぶの?」

「ん?あ〜〜〜
なんか姫って感じじゃん?」

「………」

ジトーッとした目で男を見る少女。

「い、いや…ホラよ
お姫様ってのは、たいてい悪い奴に捕まってるもんなんだよ…
あの部屋にいたオメェが、なんか捕まってる姫っポイなって思っただけなんだが…
………嫌だったか?」

「…ううん、嫌…じゃない」

少女の表情が一瞬少し曇ったのを、男は見逃さなかった。

「…そういや、お互い名前も知らなかったな…
俺は亮、大塚亮だ」

「オオツカ…リョー
リョーか………」

「で、オメェはなんてーんだ?」

「私は………
………
………」

なかなか答えない少女。

それを見て、ピンと来る亮。

少女は研究の実験体、もしかしたら…まともな名前なんてないのかもしれない。

「ド忘れしたか!?
な〜に、よくあるよくある!」

「えっ?いや…」

「ま、それならしゃ〜ねぇさ
とりあえず、俺はヒメって呼ばせて貰うぜ」

「えっ、あ………うん」

「よし!決まりだな…
よろしく、ヒメ」

「………うん
よろしく、リョー」

少女はやんわりとはにかんだ。
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