『A』
 
       ◇

グ〜〜〜

「……っと、もうこんな時間か」

腹の虫の鳴き声で時間の経過を確認する。

いかに怪盗を捕まえるか、そんなことを考えていたら、いつの間にかかなり時間が経ってしまっていた。

何かに集中すると周りが見えなくなるのは、自分の悪い癖だ、貫は心の中でそう戒めた。

事務所にはもう誰もいない、自由だ、と言われて、本当に各々好き勝手自由にするのがここのメンバーの凄いところだ。

あれはいつだったか、張り込みの仕事中に亮がパチンコをしていたのに、貫は目玉が飛び出る程驚いたものだ。

いや、もはや驚いたを通り越して呆れていた。

だが、その後キッチリ仕事をこなす辺り、流石一流、と唸ったものだ。

なんにせよ、腹が減っては戦はできぬ、何か食べに行こうと考える。

鞄から財布だけを取り出して、上着は羽織らずのラフな恰好で、裏口から外へ出る。

鍵は閉める必要はない、オートロックだからだ。

陽射しが強い、帽子を被って来るべきだったかもしれない。

「さぁて、何食おうかな」

誰に言うでもなくそう言い、貫は街をブラブラと歩き出した。

勝手知ったる自分の街、どこに何があるかなんて知り尽くしている。

「おや?」

だからこそ、見慣れないお店を見つけると、妙〜に惹かれてしまうのだ。
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