『A』
◇
ブルウゥ〜ン
重低音を上げながら道路を走るは、カスタマイズされた黒のスーパーリムジン。
運転するのは、長身痩躯のエレガント執事・鷹橋匠。
後部座席には、名家のわがまま令嬢・美那海響子と、桃色の髪の巨乳メイド・桃戸美柑。
二人は、二人っきりでトランプゲームのダウトをプレイするという、シュールな時間を過ごしている。
「あ、それダウト」
「………チッ」
その場に貯まっていたカードの山を、渋々手札に加える。
「ねぇお嬢〜」
「………なんだ?」
「これさぁ、二人でやる遊びじゃないよ…
二人だと、相手が何持ってるか絶対わかるもん」
「そうだな…やめるか
…あ〜あ、退屈だ…」
シュボッと煙草に火を付ける響子。
「なんかこう…突然
ドーーンッ!!
と面白いことが起こら…」
ドーーンッ!!
「なっ!?」
「わわっ!?
な、何?!」
響子が言い終わる前に、ドーーンッ!!という音と共に、何かが車の上に降って来た。
響子特製の特殊素材で作られたこの車は、例え力士が“百人乗っても、大・じょ〜夫”という代物だ。
天井が潰れることはなかったが、車を襲った衝撃は物凄く、咄嗟にブレーキを効かせ、何事か…と匠は車を止めた。