『A』
 
「テメェ!
まだ言いやがるかっ!」

怒る亮を尻目に、男は極めて冷静そのものだ。

そんな男の態度にまた、亮の怒りのボルテージが上がっていく。

「物に愛着を抱くのは勝手だが…
ソレは私の物だ、返して貰うぞ」

「………ヘッ」

「っ!?
………リョー?」

震える少女を、後ろから覆い被さるように抱きしめる亮。

「オメェみてぇな奴に、ヒメは絶対渡さねぇぞ!
ヒメは俺が守るっ!」

「っ!」

少女の身体を襲っていた震えが、ピタリと止まる。

そして、自分の身体をしっかと掴んで離さない亮の逞しい腕に、そっと両手を添わせる。

「…フン
容姿に騙されたのか知らんが、そこまで物に愛着を抱くとは…異常の一言だ
フリークスの考えは理解できんな」

ため息混じりに、男は吐き捨てるようにそう言い放つ。

「ん?いや、待てよ…
クツクツクツ
そうか、貴様さては知らないな?」

「……?何をだ?」

答えつつも男を睨み続ける亮。

「クツクツクツ
やはりそうか…」

「いや…」

「真実を知っていたら、その様に接すること等不可能だ…」

「やめて…お父様…
…………言わないで」

「………ヒメ?」

ガクガクとまた、否、先程以上に震え出す少女、その目には涙が浮かんでいる。

「クツクツクツ
ソレは文字通り人ではないのだ
ソレは、人に似せて作られた道具、ホムンクルスだ」
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