『A』
「ソレは、ある特殊技能を身につけた個体を生み出すという研究の下作られたもので、その唯一の成功例だ
膨大な回数の実験を重ね、夥しい数の失敗作が出たのだが…
我々は、それらをどうしたと思うね?」
「さぁな…別に知りたかないね」
先程まで沈黙を守っていた響子が、亮の代わりに返答する。
「クツクツクツ
まぁそう言うな、ここからが面白い
さて、人に似せただけの道具とはいえ、外見は人間のソレだ、おいそれとゴミとして捨てるわけにもいかない…困ったものだな」
言葉とは裏腹に、男は実に愉しそうだ。
「そこで我々は、ある処理方法を考え出した…
わかるかな?」
「「………」」
「クツクツクツ
まぁ、そう簡単にはわからんわな
ではヒントを出そう
ソレが生み出された研究所…
その名前はなんだ?」
「………綾瀬…食品研究所…
……まさか……」
少女の呟きに、満面の笑みを見せる男。
「そう!
そのまさかだ!
失敗作をミンチにして、肉として売り出したのだよ!
クツクツクツ
安くて美味いと、実に好評だったぞ」
皆話を理解するのに一杯で、何も、何も言えなかった。
「貴様らも、知らぬ内に口にしたことがあるかもしれんなぁ…
そこにいるソレも、一歩間違えたら、ハンバーグになっていたかもしれないというわけだ!
クツクツクツ
どうだ?
面白い話だろう?」
「………」
少女の顔が青ざめる。
先程食べたロールキャベツ、その中に使われていた、ミンチ肉…。
「う………、、!!」
堪らず、少女は吐いた。
胃の中が空になるまで…否、空になってもまだ止まらずに、吐き続けた。
そしてその瞳からは、ただただ、涙が零れ落ちた。