『A』
 
「黛家の仕事は、現代化し、そういったオカルト的要素が廃れていった後でも続いていたのですが…
父の代になり、遂に裏の守りは必要ない、と、廃止されました」

「まぁ確かに、今時暗殺を仕掛けて来るような輩はいないわな」

「ええ
それで、幼い頃から御庭番となるべくのみ育てられた父は、自分が世界にとって要らないものであると思い、荒れていました
その時、僕の母、堀田真矢に会ったそうです」

「やけに詳しいんだな、父親の心理描写まで…」

「あぁ、これは母から聞いた話で…母の推測による部分もあります」

「なるほど
話の腰を折ったな…
スマナイ、続けてくれ」

「はい…
そうして、母との間に僕を設け、幸せな暮らしをしていた筈…なのですが
父は外出が多くなり…
段々とこの頃から、おかしくなり始めたそうです…
僕が五つか六つの頃でしょうか、父は完璧に母と僕に別れを告げ、どこかへ出て行ってしまいました」

「病気がちだった母は、僕を育てる為、九州の田舎へと帰り、僕はそこで育ちました
そして八年前、母は亡くなり、僕が見つけた、母が僕に遺した手紙には、父を止めて欲しいという内容だけが書かれていました
母は、父の成そうとしていこたとに気付いていたようです」

「フム、で、その成そうとしていたこと…とは?」

「――世界の再構築
この世界を、生まれ変わらせることです」
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