『A』
◇
「――首尾はどうだ?」
「“石”の性能がようやく安定しました
これなら、いけます」
黛一輝の問い掛けに、パソコンの前に座した彼の部下が答える。
「フム、かなり強い暗示を掛け感情を奪ったからな
性能に支障が出るかと危惧したが…要らぬ心配だったようだな」
誘拐された少女を奪還したのはよかったのだが、道具は余計な感情を持ってしまっており、一輝の言うことに反発するようになっていた。
少女はこの作戦の要。
なので、一輝は《強制言語(ザ・ワード)》の力を使い、少女の感情を奪い去り、名実共に自分の道具に仕立て上げたのだ。
「ようやく、全ての準備が整ったか…」
黛一輝は豪奢な作りの椅子に深々と腰掛け、一人そう呟いた。
「もう少しだよ…
真矢」
一輝はまたそう呟くと、自分の世界へと入っていった…。
………………
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