『A』
 
       ◇
「僕は僕なりに、父のしていることを調べ、動いてきました
後は、大塚さんに話した通りです」

「なるほど」

響子が相槌を打つ。

「父を止めることは僕の義務です
母のことを伝えたらもしかしたら…と思い、どうにかして父に会う方法を探しましたが、首尾よくはいきませんでした
そこで、大塚さんを利用させて頂きました」

「俺を?」

「はい
父が進めているある計画とやらの鍵となる人物、あの少女を連れ出せば、父は必ず現れると思ったからです」

「へっ、なるほどな」

「すみません、他に良い手が浮かばなくて…」

「荒事請負業やってたんだ
引き受けたのは俺
別に謝るこたねぇよ」

「………」

無言で煙草を蒸し、ジュッと灰皿で火を消すと、新しい一本に火を付ける響子。

「だいたいの事情はわかった…が
その世界の再構築とやらは具体的には…」

「はい、詳細はわかりません
ですが、ロクなことじゃない筈です」

「………
フム、で、堀田…だっけか?
君はこれからどうするんだ?」

「勿論、父を止めますよ」

「フム、だが、君一人でどうこうできる相手じゃないだろう?」

「確かに…でも、僕がやらなきゃいけないんです」

「ま、それはいいさ
それより、私が言いたいことはだな…
助っ人が必要だってことだ、そうだろう?」

「っ!
それって…」

「うちのメイドを連れ戻すついでだ
君の手助けもしてやろうじゃないか」
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