『A』
激突!!
都心にある、60階建ての超高層ビル。
上から見たら教科書で見るような綺麗な台形の形で、外見上は普通のビルと呼んでいいだろう。
だが、その実中は、超ハイテクのセキュリティシステムに守られ、仮に核を撃ち込まれても大丈夫な、下手なシェルターよりも丈夫な造りの代物だ。
こここそが、黛一輝の組織の本部であり、一輝の長年の悲願の計画が実行される場所でもある。
一輝はその屋上にスタンバイし、今か今かと合図を待っていた。
本部ビルの調度真ん中、30階にあるスーパーコンピューター、その前に座す白い少女。
なにやら、カタカタと作業をしている。
滞りなく、まるで音楽を奏でるかのような少女の指が止まった時――それが、計画実行の合図になる。
バララララララララ
「………む?」
サンタクロースを待ち詫びる子供のように、ワクワクを隠しきれない一輝の瞳が、不自然に近付いて来る1台のヘリコプターに気が付いた。
この平和ボケした国にあるまじき戦闘ヘリの存在、それだけで、一輝はそれが何者のものであるかを理解した。
地面スレスレ、超々低空飛行で接近して来る。
ビルとビルの合間を縫うように、時には縦になりながらも、全くスピードを落とさない。
遂に一輝のいるビルに近付いた時に、猛然と急上昇。
ビルの真上にヘリが来た時、何かが、ヘリの横窓から跳び降りて来た。
ヒュ〜〜〜〜〜ズシャッ!
「クツクツクツ
派手なご登場だな」
落ちて来たソレは、人間二人を抱えたランニングシャツ姿のマッチョの青年だった。