『A』
◇
バララララララララ
三人をヘリで運んだ匠は、ビルの上を旋回する。
ちなみにこのヘリ、響子が一国の大統領からポーカーのカタに巻き上げた物である。
彼の目的は美柑だ。
連れ去られた美柑を取り戻す。
ただそれだけを考え、彼はこの場に来た。
「……つ…」
美柑に刺された脇腹を、顔を歪めながら押さえる匠。
「この防弾タキシードを刺し貫くとは…
流石美柑というところでしょうか」
ハハ、と、少し渇いた笑いをする匠。
「っ!」
突如ヘリの運転席の死角から、唸りを上げながらグレネードが迫り来る。
それを、有り得ない機動で躱す匠。
「今のえげつない角度からの攻撃は…美柑!
…待ってましたよ」
操舵手と狙撃手、かつての戦友であり、互いに掛け替えのない存在である二人が、立場を変え激突する!