『A』
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次々と迫り来るグレネード弾の嵐を、ヒョイヒョイと躱すヘリコプター。
操縦をするのは伝説の傭兵、黒鉄の鷹・鷹橋匠だ。
戦闘ヘリの売りは、その小回りの効く機動性。
戦場において、ヘリ以上に小型で、優れた旋回機動性能を持つ兵器は存在しない。
そのヘリの機動性に、匠の操縦技術が合わされば、敵の攻撃を全て躱しきることは、簡単過ぎる程に簡単なことだ。
鷹橋匠の特殊技能、《完全駆動支配(フォルコメント・アクセルクエスト)》の力により、このヘリコプターは現在120%の力を引き出されている。
今や、匠とヘリは完全に一心同体の存在となっている。
鋼鉄の機体は匠の身体。
機体に流れるガソリンは、匠の熱き血潮。
そして、大空を舞うそのプロペラは、匠の黒き翼に外ならない。
戦闘ヘリ“アパッチ”は、匠という操者を得て、一羽の黒鉄の鷹となっていた。
通常では有り得ない軌道で空を舞う一羽の鷹、美柑はその鷹の次の動きを予測し、その地点に砲撃を放つ。
黛一輝の言葉通り、匠が超一流の操者なら、美柑もまた超一流の狙撃手なのだ。
命中こそしてはいないものの、美柑の砲撃は絶妙の一言。
もしこれが、匠と相対したのが美柑でなかったならば、たちどころに間合いを詰められてるところだ。
もはや芸術の域にまで達している月面宙返り“ムーンサルト”。
あまりにも美し過ぎる放物線を描き出す“8の字ループ”。
曲芸とも取れる匠の匠な妙技。
匠が――鷹が、魅せる。
そうして躱しつつも、僅かずつだが美柑へと近付いて行く匠。
「美柑…待っていて下さい
必ず、貴女を呪縛から解き放ちます」