『A』
 
「キャオラァッ!」
「ひでぶっ!」

背広姿の空手家に、中足の廻し蹴りをお見舞いする亮。

達人三人を同時に相手をして、亮は全くの無傷だった。

この構えは防御の構え、同時に迫り来る三方の攻撃を完全に捌き、ちょっとした隙を突き確実に亮の反撃が決まっていく。

「驚いた
我々は、それぞれが己が道を極めし者達
未だ負けを知らずに生きて来たのだが
個人個人では、貴様には到底敵わんか」

「そういうこった
勿体振ってねぇで出せよ、オメェらが磨き上げた、三位一体の攻撃をよ」

「っ!
何故それを…」

「わかるさ、オメェらの持つ技の数々が、そのことを俺に教えてくれる…」

急ぎの時だというのに、相手が全力を出しきらずに終わり、後悔することを心配する亮。

彼は、格闘技者として生きていくには優し過ぎた。

否、それだけの優しさを持つが故に、神はこの男に、これほどの強さを与えたのかもしれない。

男は、強くなくては生きていけない。

そして、優しくなければ生きてはいけないのだから。

「ふん、後で後悔しても知らんぞ…」

三人が三角形の形にフォーメーションを組む。

「俺は反省はしても後悔はしない
遠慮はいらねぇ…来い!」
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