『A』
 
「む…う、これは…」

鼻血を出しながら、一輝はムクリと身体を起こす。

「また、随分と熱烈なやつをやったな…
どうだった?床とキスした気分は」

「ぬぅ
合気…か
しかし、ここまで実戦で完璧に実践しているレベルのものには、初めてお目にかかる」

「なかなかのもんだろう?
ガキの時に、ちんちくりんの爺さんから護身術にって習っただけなんだがな
全く、我ながら自分の才能が怖い…」

「益々惹かれる…
美那海響子、君は紛れも無い天才だ」

「ああ、知ってるよ
ま、意外につまらないものだけどな
才能があり過ぎる、ってのも」

堂々とそう言い放つ響子、あまりにも平然としたその態度から、虚偽やハッタリではなく、彼女が心の底から、そう言っていることがわかる。

「クツクツクツ
げに面白い!」

鼻血を拭い、バッと構える一輝。

「何度来ても同じ………
ん?いや、さっきと何かが違うな」

一輝の取った体構えは先程と全く同じ、ただ、今回は気構えが違うのだ。

心と体がバラバラでは、どんなに高い技術を持っていても、十全の力を発揮することは叶わない。

わかりやすく言うと、先程まではナメていた一輝が、マジになった、ということだ。

「八極とは大爆発のことだ
立ち塞がる障害は全て消し飛ばす!
この拳で!」

「柔よく剛を制す…
全て受け流してやるさ」

「剛よく柔を断つ!
君の柔(やわら)が上か、私の発勁が上か…
一つ、勝負といこうではないか」
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