『A』
◇
三者三様の戦いを繰り広げている中、少女は黙々と、自分の仕事をこなしていた。
「………」
無言でただひたすらに、キーを打ち続けていた少女のか細い指が、ピタリと止まる。
少女は、その与えられた役割をこなし、日本を越え、世界中の、ありとあらゆるネットに繋がったものを支配下に置いた。
それは、個人のパソコンといったレベルのものから、合衆国の核制御システムといったレベルのものまで全てだ。
ありとあらゆるものにハッキングを仕掛け、そしてつい今しがた、それら全てを、完全に掌握し終わったところというわけだ。
更にそれだけではない。
もし、ハッキングしたことが分かれば、当然抵抗され、対策を取られる。
その為、少女はハッキングしていることを悟られないようにしながら、乗っ取りを仕掛けている。
その隠密性は、全てを掌握し終わるまで、遂に誰にも気付かせなかった程だ。
ネット社会と言われる現在に於いて、少女は今、世界全てを統べし存在となったのだ。
現在、時刻は18:55。
計画決行への時は間近で、刻一刻と近付いていく。
世界の運命の時へのカウントダウンが、始まった。