『A』
 
       ◇

バララララララララ

ヘリのローターの駆動音が鳴り響く、匠は遂に、美柑を肉眼で確認できる距離にまで接近していた。

後は、どのタイミングで機を捨て、美柑に接近するか…だ。

そんなことを考えながらも、操縦する腕は休ませない。

再度飛来する攻撃を、もはや慣れた様子でヒラリと躱す。

………が、

「っ?!」

ガクン!と、ヘリが揺れる。

慌てて美柑に目をやると、その場にいる筈の彼女の姿がない。

「まさか!」

そう、特殊技能《能力限界突破(オメガ・ビオメハニカ)》の力で、脚力を強化しての大ジャンプ。

垂直跳びで驚異の50m。

どんなに瞬発力に優れた獣も、こんな大それた行為はできはしない。

美柑の身体能力の高さは桁違いだ。

グレネード弾の影に隠れ、美柑は自らが肉弾となり、ヘリを素手で落としにかかってきた。

「くっ!
ローターをやられた!?
墜落する!」

浮力を失ったヘリは流れ星となり、街にあるビルの一つの上に墜落。

燃料に引火したのか、墜落地点で爆発が起き、ちょっとしたクレーターが出来上がる。

匠も、そして美柑も、脱出した様子は見られなかった…。
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