『A』
世界が生まれ変わる時
「私の声が聞こえているかな?
私の姿が見えているかな?
世界中の諸君」
その時、世界中の全ての場所で、ある一人の男の声が、高らかと響き渡る。
少女が、ありとあらゆるネットに繋がるものをハッキングし掌握したのは、この為だ。
音を出す物、映像を映し出す物は皆須らく、ある一人の男がビルの屋上で行う演説を映し出す。
例え電源が切れていても、少女に遠隔起動させられる為、本当に、全てだ。
携帯電話、パソコン、TVやラジオの全ての番組、つまりは、全く文明の機器がない場所を除き、全ての場所で全ての人間が同じタイミングで、男の演説を聞くことになる。
「いきなりで申し訳ないが…
【私の話を、黙って見て聞いてくれ】」
例え電波を介しても、一輝の《強制言語(ザ・ワード)》の力は衰えない。
数多くの人間に対して、同様の効力を発揮する。
突如現れた謎の画面にざわついていた民衆達は、水を打ったように静まり返り、黙って一輝の演説に聴き入った。